(6)造るべきかどうか悩む

横山晃先生が生涯を通して追及した設計テーマは、海と深く接触していくためのヨットであった。
そのヨットは、あらゆる季節、あらゆる気象に耐え、しかも十分に長い時間を海で過ごせる船、充分に大自然に関心を持てるような、気持ちの余裕を持てるヨットである。
私はこれまでに12000時間以上のセーリング時間を過ごした。しかしまだ海に出て学びたいことが残っている。そのために造ろうとするヨットがZen30である。

ヨットの個性は人間と同様に、外面と内面とで現わされる。外面性とは、ヨット大きさ、豪華な内装、それに便利な機器類だといえよう。ヨットの内面性とは、操縦のしやすさ、嵐に耐える耐候性、航続性能である。あらゆる海象に耐え、あらゆる海域で航海でき、長距離の航続性能を兼ね備えるヨットを求めている。

私が求めるヨットは、まさに横山先生の追及されたヨットである。
シングルハンドで操ることができることが必要だ。たとえ何人で乗ろうとも、自分自身で操ることができないようでは、スキッパーとしての責任を果たすことはできない。自分一人で、すべてをコントロールできるヨットの最大のサイズは、全長30フィート、排水量3tまでであろう。
それは刀剣に例えれば、修羅場で思うように操ることができる手軽さと切れ味であり、さらに折れず曲がらない正宗のような名刀である。
このような個性を持つFRP製のヨットは、国内外ともに存在しないので、自分で造る以外にない。

Zen30プロジェクトは、自分のヨットを造ることであるが、FRPヨットのモールド開発技術を継承していくことがもう一つの目標となる。
しかし目標の達成には3年がかりとなり、意欲が持続するだろうか。かかる金額も多大なものとなるだろう。これは簡単には開始できる話ではない・・・。

(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (9) (10) (11) (12) Zen30

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