
(1)ヨットというスポーツの価値
Zenを語るとき、ヨット設計家横山晃先生が生涯を費やした、ヨットの個性の追求と実現に至る過程を述べねばならない。なぜならZenは、横山先生が400種の船を設計し、晩年になって到達した設計の最終結論だからである。そしてZenは、私自身のために造る艇だから、求める価値がそこにあるのかが大切となる。
1.ヨットというスポーツの価値
「人間が荒野の真っただ中に孤立したとき、まず願うのは生存であろう。陸棲動物の人間が小艇で海上に出れば、陸からの距離とは関係なしに、しばしば同様の場面に立つのは必然である。
ヨットというスポーツは、そのような人間の生存意欲という原点にわざわざ近づき、そこからの出直しを経験する一面を持っている。
幸か不幸か、海の風と波は千年前、万年前と殆ど変わっていない。だが人間の方は最近、目立って自然から離れつつあるし、野生の逞しさと野生の知恵を失いつつあるのが現実である。ヨットというスポーツの価値の大半は、人間が大自然の方へ歩み寄るところにあり、人間の野生を取り戻す努力にある。
海と人間の本性を知り、特定の人間の意図と条件に立脚したとき、英知ある人ならば、最適の船を直観するはずである。
ヨットの性能と性格は、スピード、切上がり性能、スタイルと船内の美しさといったような、他人へのアピールに統一される場合もあり、操縦性、保針性、安全性、航続力、使い良さというように、乗艇者自身の一部分としての価値づけに集中される場合もある。
前者が外面的とすれば、後者は内面的で、レーサーと量産艇には前者が多く、クルーザーと自家用艇には後者が多い。」
2.「海を知ること」に続く
「ヨットの設計」 舵社刊 横山晃著 昭和55年 から一部抜粋修正
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