セレーヌの特徴・安全・低燃料消費のシングルエンジン

セレーヌ43のメインエンジンは、シングルエンジンです。なぜでしょうか。より安全で、より低燃費だからです。
エンジンを2機掛けにすれば、スピードが上がり、安全であると単純に考えて良いのでしょうか。
セレーヌの設計者であるハワード・チェンさんに聞いてみました。チェンさんは東海大学(台湾)造船工学マスターです。

「セレーヌの特徴は一口に言うと外洋も安全に走れる、長距離クルージング・ボートです。高速艇のように燃料を垂れ流すのではなく、ハンプ抵抗の範囲内である10.5ノットにスピードを抑えました。」
「青木さん、ご存じだと思いますが船は全て、水線長の長さによって最高速力が決まります。」
「速長比約1.3の大ハンプ抵抗を越え、艇をプレーニングさせるにはエンジン馬力は約12倍必要になります。セレーヌ43ならば、水線長が40フィートなので11ノットを超えるには、2000馬力以上が必要なのです。」
「しかも常にエンジンを高速回転させますから、自動車で言えばローギアで高速道路を走行するのと同じ状態なのです。燃料消費率が大きく跳ね上がる理由はそこにあるのです。」

セレーヌ43のハンプ抵抗と速力/馬力曲線
セレーヌ43のハンプ抵抗と速力/馬力曲線

「そうですね、高速ボートは艇体重量を軽く造り、大きなエンジンを積みますね。」
「セレーヌ43は10.5ノットですが、波をたたかず、静かな乗り心地の良さを選んだのです。」
「でもね青木さん、日本の小型漁船はインド洋まで行くそうですが、2機掛けにしていますか。」「エンジントラブルの多くは、エンジン本体ではなく冷却水系、潤滑油系などの周辺系統が原因です。」
「それはメンテナンスで防げるのですよ。セレーヌは広いエンジンルームをシステム化し、配線、配管は色分けしてあります。メンテナンスは実にやりやすいと思いますよ。」

「ええよくわかりますが、エンジンが2機あれば、やはり安心ではないですか。」
「そうとは言えないのです、2機掛けにしても残る1機のエンジンでで帰ってこれるのは、限られたときだけでしょう。」
「その通りです。静穏な海面のときだけですね。」
「セレーヌは、自分の艇として中高年者に乗っていただくための船です。彼らはスピード競争ではなく、見かけの豪華さでもなく、艇体の安全性と本物の内装を求めているのです。艇体のゲルコートにはビニールエステル樹脂を使っています。従来のポリエステル樹脂に比べ、ずーと長持ちします。内装はチェリーウッドをオランダ製のエピファンという最高級のニスで仕上げています。
「ええ、私も同感です。本物の持つ価値を理解いただけるオーナーは、日本にもおられます。中国製は品質でどうかといった迷信がまだ残っていますが、本物は一目見ていただければ、わかってもらえますから。」